当院には誤嚥性肺炎の診断をうけて入院される方が多くいらっしゃいます。飲み込みの力を評価するのが私たち言語聴覚士の仕事ですが、実際に評価してみると飲み込み機能の低下だけでなく、咳をする力が弱くなっている方が多い印象を受けます。人間には本来、身体を防御する機能が備わっているため、食物や異物が気道に入ってくるとムセや咳で身体の外に出そうとします。でも、その力が弱かったら?最悪の場合、肺炎になってしまいます。今年の2月には俳優の宝田明さんも誤嚥性肺炎で亡くなっています。直接肺炎にならなくても、別の病気で入院中に寝ていることが多くなって筋力が低下して誤嚥性肺炎になるということもあります。いま健康なうちに、手足の筋力だけでなく、呼吸に関する筋力も鍛えて予備力を高めておきましょう。
<家庭でできる咳トレーニング>
①息を吸う力を鍛えるトレーニング:紙片をストローで吸い付け、コップに入れる。
難易度を上げる場合
〇 吸うものを変える:ティッシュペーパー→折り紙→厚紙→ペットボトルキャップ
〇 枚数を増やす。
〇 吸い上げてから10数えてからコップに入れる。 など
②息を長く吐く練習:ペットボトルに水を入れ、ストローでブクブク吹く。
難易度を上げる場合
〇 水の量を増やす:水圧を利用して負荷をかけるので、ストローの深さが大切です。
水量を増やしても、ストローの水深が浅いと意味がありません。
〇 吹く時間を決める:成人の正常値である20秒を目標に少しずつ伸ばしましょう。
③瞬間的に強い息を吐く練習 その1:喉に力を入れずに「ハッ」と息を吐く。
寒いときに手を温めるときのイメージ
④瞬間的に強い息を吐く練習 その2:
「ストロー吹き矢」曲がるストローの長い方(本来は飲み物に入れる方)を口にくわえ
曲がるストローの短い方(本来は口にくわえる方)に綿棒を入れ勢いよく吹き、綿棒を飛ばします。
※ストローの曲がる部分を少し曲げておくと誤って吸い込んだ時に安全です。
文:松島環(言語聴覚士 主任) 絵:池畑琉宇(作業療法士)