西堀病院リハビリ課のブログ 西堀病院リハビリ課のブログ

身体能力に応じて介助も柔軟に対応

身体機能が向上すれば、ベッドを離れて食事やトイレ、入浴、リハビリなど、活動・参加が増えます。しかし、下肢機能が低下している状態では車椅子での移動が選択されます。我々セラピストをはじめ、看護師、ケアワーカーは患者様の入院生活を支援する上で、車椅子への移乗をサポートする機会は非常に多いと言えます。また、移乗動作は複雑な動きであるがゆえに、介助方法によっては身体機能を高めることもできれば、逆に回復を阻害する可能性も考えられます。さらには安全面に対しても十分な配慮を必要とするため、移乗介助は高度な技術を求められる行為とも言えます。そこで今回は「移乗介助」についてお話ししたいと思います。

移乗とは「ベッドから車椅子あるいは車椅子からベッドや便座などへ移動する動作」を指します。介助のポイントとして、(1)環境調整、(2)移乗する前の姿勢調整、(3)身体重心を足部へ移行、(4)方向転換、の少なくとも4点を考慮しています。重要なことは介助者・被介助者ともに安全かつ安楽に行なえ、身体機能に対して効果的であることです。

(1)環境調整:ベッド→車椅子への移乗を考えてみましょう。車椅子をベッドに斜め付けし座面間を最短距離に設定するのが一般的ですが、場合によっては車椅子が体に近すぎて立ち上がった後の動きに必要なスペースがなくなり、下肢が車椅子に接触するなどの問題が生じます。移乗という複合的な動作を分割し、動きを断片的に捉えることで、車椅子・ベッド・手すり・被介助者の位置関係や最適な距離設定が判断しやすくなります。

(2)移乗前の姿勢調整:今から自分が椅子から立ち上がる場面を想像してみましょう。まず両足を最適な位置に接地し、目的の方向へ視線と体を向け、状況によっては手すりに掴まるなど、楽に立つための「構え」の姿勢をとるはずです。介助する際も、被介助者にとって楽に立つための最適な構えの姿勢を探します。

(3)身体重心を足部へ移行:先ほど同様立ち上がる場面を想像すると、まず前方へ深くお辞儀をした直後に両足で一気に体重を支えます。つまり、身体重心が最も大きく移動する瞬間です。ここでは被介助者の身体能力の把握が要求されます。動ける方であれば、「よいしょ!」のタイミングを見極め、介助というよりは動きを促すようにガイドします。介助者の一方的な誘導だと本来の自然な動きを阻害する可能性があるのです。したがって、セラピストは移乗を介助で済ませるのではなく1つの「機能訓練」として捉え身体能力向上に繋げようと考えています。

(4)方向転換:この場面も身体能力に応じて動作パターンを多様化させ、介助量も変化させます。両足で立っている状態なので、両脚支持が困難な場合は被介助者の両膝を介助者が固定します。片脚支持が可能な場合は、その支持脚に重心を移し対側の膝を固定してあげます。両脚支持が可能な場合は両脇を支える程度の介助に留め、被介助者の動きを最大限に引き出します。

以上、ざっくりですが移乗介助についてまとめてみました。被介助者の身体能力や体格、さらには環境によって介助方法も変えていくので、知識だけでなく経験を積むことも重要です。当院では定期的に移乗研修を開催し、セラピストの専門的な視点から他部署の方々と一緒に移乗介助のさらなるスキルアップに向けた取り組みを行っています。
普段介護をされている一般の方や介護施設の職員の方に対しても出前講座を行っていますので、興味のある方は、西堀病院リハビリテーション課伊丸岡(いまるおか)0138-52-1531までお気軽にお問い合わせください。

  
(文:理学療法士主任 渡邉)

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